産地の情報をお届けする「産地のおと」
若手に引き継ぐ、地域と食の未来
のどかな田園地帯が広がる宮城県黒川郡大郷町で、環境保全型・資源循環型農業に取り組む大郷みどり会(以下、みどり会)。
近年、その大郷町でも耕作放棄地の増加、農家の高齢化など、地域一帯で深刻な問題を抱えています。水田地帯であるが故、米消費量の低迷、米価下落、減反制度の廃止など、厳しい米穀情勢が直に影響しているといいます。
そのような逆風の中、みどり会では30~40代の若手4名が中心となり、地域の田んぼを守るために約65ヘクタールの水田で有機栽培や特別栽培といったレベルの高い米作りに取組んでいます。
現在、栽培する水田作付面積の6割を若手が管理。稲刈り後の12月頃から、翌年の土づくりに向け土壌分析を行い、地形や土質などに適した肥料設計を行うところから始まります。みどり会のベテラン生産者から助言をもらいながら、米作りの計画から田んぼの管理まで一貫して若手が行います。
大郷みどり会の若手4人(左から、只野正志さん、西塚忠樹さん、松野剛明さん、清水浩規さん)
「栽培計画を立てる時には、土壌分析の結果も大事ですが、田んぼの特性や地域特有の環境条件も考えることが大切です。例えば、田植え時期の水の引きやすさや、周りの農家の人柄もわかった上で作業を組み立てていきます。逆に、私たちが自分勝手なことばかりやっていては、地域で農業はできません。目に見えないことですが、ここでの米作りを通じて、地域とのコミュニケーションがものすごく重要だと気付かされました。苦労もありますが、日々のなにげない会話があることで、自分たちの手が回らない時に地域で米作りの先輩が手を貸してくれることもあります」
そう語るのは、若手の西塚忠樹さん(33歳)。みどり会で、有機栽培圃場の管理責任者です。
「毎年、計画を立てる段階からワクワクしています。自分たちの力で米を栽培するその過程が楽しい。計画通りに栽培できた時は、本当にうれしさでいっぱいですが、今年のようにうまくいかない年もあるのが農業。この悔しさをバネに、来年はもっとこうしたい、と今からいろいろと考えています」と、意欲的です。
そんな姿に、みどり会の郷右近代表は「今、みどり会では若手が中心になって、有機栽培や優ぶらんど基準に挑戦している。これからは、地域のリーダーとして地域を巻き込んでいくこと、そして、組合員を巻き込んで、産直運動をけん引してほしい」と若手に期待を膨らませています。
みどり会代表 郷右近秀俊さん
「地域の中で認められる農家になって、この地の米作りを守りたい。有機農業を軸に、地域の田んぼの半分以上を請け負えるだけの実力をつけることが当面の目標です」と西塚忠樹さん。
先代が守ってきた地域の米作り、そのバトンは確実に次の世代へ受け継がれています。
玄米・みどり会のひとめぼれ(有機栽培)