■ネオニコチノイド系農薬とは…
神経毒性による殺虫剤で、水田のカメムシや畑でのアブラムシなどの防除に高い効果を示します。作物への浸透性が高く、残効性もあります。
この数年、世界中で報告されているミツバチの大量死や減少、CCD(蜂群崩壊症候群)と呼ばれる現象の直接的な原因にも関わるとみられており、ヨーロッパ諸国では使用を禁止する国もあります。
農薬として使われるほか、家庭用の殺虫剤やシロアリ駆除、森林や公園等の松枯れ予防等、農業以外にも広く使われています。
■ネオニコチノイド系農薬の削減取り組み
あいコープみやぎ3年到達ビジョンの1つである、加害者にも被害者にもならない暮らしを実現するため、生態系を脅かすといわれるネオニコチノイド系農薬の削減を進めています。あいコープ提携生産者と共に、ネオニコチノイド系農薬不使用宣言を推進し、すでに米作りでは全廃できました。
農薬削減を大きな目標とする農法研究会では、各産地の工夫や対策を学ぶため、今回は『除草・病害虫防除』の真っ最中の生産現場を見学してきました。
また、早くから持続可能な農業のあり方を目指して農薬削減を実践する米沢郷牧場の見学レポートと、ネオニコチノイド系を含めた農薬削減に向けた、各産地での新たな取組みをご紹介します。
■無農薬で行う米作りの工夫とは?
米の美味しさと収量を向上させるためには、いかに雑草に負けずに育てられるかがポイントです。雑草は、イネの栄養を奪うことや、いもち病や斑点米のカメムシ発生の原因にもなるためです。
農薬を使わないと、収量は約30%低下し、労働力は40%上昇しますが、このほとんどが除草作業です。それでも、無農薬栽培に挑戦するのは、持続的で環境汚染の心配もなくなるからです。
大郷みどり会では新たに除草用機械を導入したので、効率的に広大な面積の水田の除草ができるそうです。
農薬に頼らず、田んぼの様子を見ながら除草を行い、効率的な技術を確立できれば、無農薬栽培の水田が徐々に拡大されると期待しています。
■やればできる、無農薬でも美味しく豊作に
先進的な農業を実践している米沢郷牧場/伊藤幸蔵さんの無農薬水田では、イネが葉をのびのびと広げ、太陽の光を浴びてすくすくと育っています。
育苗時から、太くて節のつまった強い苗をつくること。イネ本来の力を引き出してやれば、農薬に頼らず、天候にも負けない、美味しくて収量もとれる米作りはできるといいます。
果樹栽培でも無農薬で美味しく栽培できた方がいるそうです。手本となる生産者がいることで、無農薬の果樹栽培に挑戦する人も増えています。
地域全体の環境を考え、一人ひとりが方法を選択しながら農業をしている姿勢を学ぶことができました。
■各産地の取組み
◆大郷みどり会
米作りでは、斑点米の原因となるカメムシ対策に殺虫剤ではなく、忌避剤を使っています。天然成分の有機質資材で、カメムシの発生にあわせて散布します。野菜作りでは、食用油脂が主成分の資材を使い、病害虫の被害を抑えられています。今後も従来の農薬に代わる資材で効果が確かめられれば、実施圃場や対象作物を広めていきます。
◆七郷みつば会
現在は、殺虫剤を使わなくても、ハウスでのアブラムシなどの被害はだいぶ少なくなりました。害虫が嫌う反射性のマルチを地面に敷いたり、黄色い虫取り用テープをぶら下げたりする防虫対策の効果がでてきたのです。米作りでも、来年は津波被害のあった田んぼでも、除草剤も使わない無農薬栽培に挑戦します。
◆迫ナチュラルファーム
実験的に害虫が嫌がる作物の『混植』を行ってみました。トマトの株間にバジル、ハウスとハウスの間にニンニクを植えてみると効果がありました。株の剪定やハウスの換気など、普段行う当たり前の作業を、適切な時期に行うよう心がけます。野菜にとって良い環境を整えることで、病害虫の予防にもつながり、農薬に頼らない強い野菜を育てていきます。
◆天童果実同志会
果樹栽培での農薬削減は難しいといわれますが、りんごでの農薬散布の延べ成分数を慣行の半分にすることに挑戦します。病害虫防除は’予防’が基本。天候や木の様子をみて、タイミングを逃さずに防除して、少ない農薬散布回数でも美味しく、たくさん収穫できるよう挑戦していきます。使用する農薬も、環境への影響が少ないものを選び、生産者へ広めたいです。