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放牧酪農で「地域の資源循環」と「良質な生乳」の生産を実現-産地のおと-



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放牧酪農で「地域の資源循環」と「良質な生乳」の生産を実現
放牧酪農で「地域の資源循環」と「良質な生乳」の生産を実現

産地紹介:株式会社飯豊ながめやま牧場(山形県西置賜郡飯豊町)山形県の飯豊連峰のふもとにあり放牧酪農に取組む牧場。敷地面積は180ha、広大な牧草地で母牛から子牛までおよそ300頭を飼育。2006年より放牧酪農に取組み、2010年に「放牧畜産実践農場」の認証を取得しました。その牛乳は「放牧酪農牛乳生産基準」を取得した(株)奥羽乳業でパスチャライズ製法により殺菌され、あいコープへ放牧パスちゃん牛乳として出荷されています。2013年より取扱いが始まり、現在では年間36万5千本利用されています。
放牧パスちゃん、牛乳のこだわり

あいコープの「放牧パスちゃん牛乳」は牛乳本来のコクや風味を味わうことのできるパスチャライズ牛乳(注1)です。一般の牛乳の多くが超高温殺菌牛乳(120℃~130℃ 2秒間殺菌)に対し、本品は75℃ 15秒で殺菌する高温殺菌(パスチャライズ製法)を採用。このパスチャライズ牛乳は生乳の特質を活かした製法であり「良質な生乳」が必ず必要です。

注:パスチャライズ牛乳…風味を損なわない温度で生乳を殺菌した牛乳

ながめやま牧場設立にあたっては「酪農とは、大地の土が育んだ草を牛が食べ、草を食べた牛はそこで糞をして土を肥やす。その自然循環の中の1コマである」という考えを基本とし、牛が広大な放牧地でのびのびと動き回り、健康的に育つことができる環境づくりに尽力しました。2010年にその取組みが認められ、ながめやま牧場は「放牧畜産基準(注2)」を満たした牧場として認証されました。酪農経営で認証を受けた牧場は本州ではわずか4カ所のみとなっています。ながめやま牧場の放牧酪農は「良質な生乳」の生産と「資源循環」が実現できる理想の環境が整っています。

注2:(一社)日本草地畜産種子協会の定める放牧畜産における放牧地面積や放牧時間など飼養管理について定めた基準。

広大な放牧場
広大な放牧場
牛舎から牧場へ移動する牛たち
牛舎から牧場へ移動する牛たち
良い牛乳は健康な牛から

ながめやま牧場の生乳を「放牧パスちゃん牛乳」に製品化している奥羽乳業では、原乳を受け入れる際「体細胞数」と「生菌数」などの検査を行います。一定の基準をクリアしたものでなければ受け入れはできません。原乳の品質は牛の健康状態が大きく影響します。超高温殺菌よりも殺菌温度が低いパスチャライズ製法は、生乳の品質が悪いと製品化後の品質も悪くなってしまうため、一般の牛乳よりもより一層気をつかわなくてはなりません。

実は牛はとてもデリケートな動物で、ストレスにとても敏感です。日々の健康管理、牛舎や搾乳施設の衛生管理の徹底はもちろん、開放的な牛舎や放牧地で自由な行動ができることが牛のストレスを減らし、健康と原乳の品質につながるといいます。

資源循環型酪農

毎日300頭の牛から出る糞の量は約13トンで、それらはすべて有効活用されます。牛舎から運び出した糞は自前の堆肥舎で空気ともみ殻と混合し、2~3週間かけて発酵させていきます。最終的にはさらさらとした臭いの少ない完熟堆肥となります。出来上がった堆肥は敷地内にあるデントコーン(注3)畑の土づくりにも活用されます。12haを超える広大な畑にとってはなくてはならない大切な資源です。またバーク(樹の皮)と混合し、牛舎の敷料としても活用するコンポストバーン(注4)にも取り組んでいます。敷料が堆肥化する際に、放線菌が増えることで牛にとっても有害な大腸菌などの繁殖を抑える効果も期待できるそうです。

コンポストバーン(注4)牛舎を攪拌する様子
コンポストバーン牛舎を攪拌する様子
高橋副場長「牛たちのために良い退避を作るのも大切なのです」
高橋副場長
注3:デントコーン…飼料用のトウモロコシ
注4:デントコーン…コンポストバーン…牛舎の休息エリアに堆肥を積み上げ、朝夕2回、ロータリーで攪拌し、牛舎内で糞や尿を堆肥化させます。クッション性にも優れ、牛が心地よく過ごすことができます。

ふかふかでリラックスするモ~
ふかふかでリラックスするモ~
エコフィードの取組み

ながめやま牧場では地域の食品副産物の活用にも積極的に取り組んでいます。近隣の生産工場から出るおからやフルーツかす、ウイスキーの搾りかすなどを牛のエサに混合します。本来は産業廃棄物になってしまうものも「資源」として、活用するこのエコフィードの取り組みは、飼料の国内自給率向上に大きく貢献しています。輸入飼料に頼る畜産現場の中で、ながめやま牧場の牛たちが食べる飼料は、自給の牧草や自家生産のデントコーン、エコフィードにより約3分の2が国内産で賄うことができています。

ウイスキー粕(左)、おから(右)
ウイスキー粕(左)、おから(右)
ブレンドしたエサ
ブレンドしたエサ
若き牧場の担い手

31歳の若さで牧場の副場長を任されている松岡さん。前職は酪農とは無縁でしたが、縁あってながめやま牧場で働きはじめたそう。「牛たちのこと、牧場のこと、畑のこと。任されている分やりがいもあり、楽しみながら続けられていると思います。牛も自分もストレスフリーな牧場です。」と笑顔で答える松岡さん。しかし松岡さんが牧場で働き始めた5年前に比べ、地域の酪農家は確実に減っているそう。家族経営の酪農家は、息子の代になり廃業してしまう場合も見られます。それでも松岡さんはながめやま牧場での放牧酪農に携わっていきたいと言います。「牧草管理に力を入れて、放牧地をより快適にしたいです。今は元の地力に頼っている部分もあって、今以上に土づくりに取り組んで、よい牧草を牛たちに用意してあげたい。ながめやまでの放牧酪農をこれからも続けられるよう励みます。」。

松岡副場長
松岡副場長
日本の酪農は今春乳価が上昇しましたが、依然として作り手の減少、海外に飼料を依存する厳しい現状があります。そんな中、ながめやま牧場は放牧酪農で牛の本来あるべき姿を実現し、社会情勢に左右されない取組みを実践しています。日々の利用を通じて、地域も牛も元気になる、明るい酪農の未来を共に築いていきましょう。

放牧パスちゃん牛乳
放牧パスちゃん牛乳

鶏の健康を一番に、こだわり続ける卵 -産地のおと-



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鶏の健康を一番に、こだわり続ける卵
鶏の健康を一番に、こだわり続ける卵

産地紹介:株式会社花兄園(宮城県大崎市鹿島台)花たまごの産直産地。「自分自身が食べたいと思えるものをつくりたい」との思いから、創設者の大須賀木社長は飼料の配合設計、鶏卵の生産、販売を一貫して行うため1975年に花兄園を設立。鶏の健康や飼料の安全性を重視した飼育にこだわった卵の生産を行っています。大和町宮床、川崎町支倉の2か所に開放鶏舎の農場があり、そこで採卵された卵は、大崎市鹿島台にある自社のGPセンターでパッキングされます。花兄園の「花兄」とは梅の別称。「梅は春、他の花に先駆けて咲く」ことから、何事も先だって行動するように、との思いが込められています。
太陽の光と自然の風を感じる鶏舎

一般的に流通している卵の多くは、窓のないウインドレス鶏舎で飼育された鶏の卵です。一方、花たまごの産地、花兄園の宮床農場、支倉農場では太陽の陽が差し込み、窓からは自然の風が入る「開放鶏舎」で飼育された鶏の卵です。鶏は自然に近い環境で、昼夜の寒暖差や四季を感じながら、生き物として育てられます。

また、震災前、花兄園ではヒナの育成段階から必要最低限のワクチン以外は使用しない、「無薬飼育」にも取り組んでいました。普通、飼料に抗生物質や薬剤を混ぜることで病気などを予防することがありますが、花兄園では衛生管理を徹底しながらも、健康で元気な鶏を育てることで、病気に負けない体づくりに力を入れています。農場設立当初から一貫して「鶏たちの健康」を一番に考えた花兄園の取り組みはあいコープの組合員から長きにわたり支持されてきました。

宮床農場の鶏舎
宮床農場の鶏舎
安全性を追求したエサと資源循環

採卵鶏の飼料はトウモロコシが主体。世界的に遺伝子組換えが広がる中で、年々、非遺伝子組換えトウモロコシの作付けは減少し、その確保は難しくなっているといいます。そのような中でも、花兄園では非遺伝子組換え、さらにポストハーベストフリー(PHF=収穫後の農薬が不使用であること)のトウモロコシにこだわってきました。

「安全性に不安のあるものは食べさせたくない。コストよりも自分たちが納得する飼料を与えたい」との思いから、花兄園ではトウモロコシ以外の飼料についても、地域で生産された飼料米を約20%配合するなど国内自給率の向上にも取り組みます。今後は、この飼料を食べた鶏の糞を堆肥にし、飼料米を生産する田んぼへ還元していこうと、地域内資源循環も視野に入れています。

飼料米配合のエサ
飼料米配合のエサ
おいしいごはん!コケー!
おいしいごはん!コケー!
鶏糞の堆肥舎
鶏糞の堆肥舎
震災を乗り越え、つなぐ未来

東京電力福島第一原発事故により、当時生産拠点となっていた福島県大熊町の農場が立入禁止区域となり飼育していた鶏12万羽が餓死させられ閉鎖に追い込まれるという大きな被害を受けました。また、ヒナの育成を担っていた農場も閉鎖され、花兄園のこだわりのひとつであった「無薬飼育のヒナ」は、復興するまでの間、外部委託せざるを得ない状況となってしまいました。

外部で育成したヒナは、体ができあがっていないうちに卵を産みはじめたり、予定よりも早い時期に卵を産まなくなってしまったりと課題もありました。いつかまた震災前のようにヒナの育成を再開したい、という夢をあきらめなかった大須賀さん親子。震災から8年後の2018年11月、ヒナを育てる農場を宮城県加美町に再建し、ようやく自社育成が可能になりました。「復活へ向けた大きな一歩を踏み出せました。他とは違うこだわりの卵をこれからも貫いていきたい」と裕さん。

国内では採卵鶏の羽数は増える一方、農家の数は減っていると言います。これは大手の養鶏業者による寡占化が進んでいることを意味します。リスクもコストも大きい飼育方法でも「自分たちの食べたいもの」にこだわった「花たまご」。震災で一度は途絶えかけた取組みも、生協組合員とこれまで重ねてきた産直交流でのつながりが、復活に向けた原動力となり、続けることができました。震災を乗り越えた産直卵は、40年前のあいコープ設立時から続く、「花たまご」として深く愛されています。「毎日食べるものだから、良いものを、買いやすい価格で届けたい。そして多くの人に食べてもらいたい。」産直がスタートした時から、大須賀さん親子が大切にしている思いです。「花たまご」の未来を支えるのは、これからも私たちの日々の食卓なのです。

農場で集荷された卵
農場で集荷された卵
花たまご・10個パック
花たまご・10個パック

命を育む「食べ物」-産地のおと-



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命を育む「食べ物」
命を育む「食べ物」

産地紹介:茨城BM(茨城県茨城町)自然循環型農法確立を目指しBMW技術を活用した青果の栽培に取組んでいます。BM活性水を活用した良質な堆肥作りや微生物と共存した土づくり、土壌分析に基づく施肥により、作物を丈夫に育てることで農薬削減を実践しています。
「BMW」技術を 取り入れた農法

「優ぶらんど」の小松菜やホウレン草、農薬不使用のさつま芋(紅東)、など栽培レベルの高い農産物を出荷している茨城県茨城町の産直産地、茨城BM(ビーエム)。

社名にもなっている「BM」とは、BMW(バクテリア(B)・ミネラル(M)・ウォーター(W))技術のことです。自然界にある水資源循環の仕組みを地域の岩石や微生物を用いて再現する技術。この仕組みを利用してつくられた水はBM活性水と呼ばれ、良質な堆肥作りや土作りなどに活かされています。

茨城BMの創設者である清水澄社長(83歳)は、農薬や化学肥料を多投した効率優先の農業が一般的になりつつある時代に、「食べ物」=「命を育む」という考えを重視し、BMW技術を用いた農法に取り組みました。

「私たちは作物を通じて、体づくりに必要な炭水化物やたんぱく質、ミネラルなどを摂取します。腸内の菌やバクテリアなども作物が育った土壌に由来すると考えれば、土壌のバランスを整える農法が食べる人の健康にもつながります。農薬に頼らない健康な作物を育てるためには、土壌微生物の力を引き出し、しっかりとした土を作ることが大切です。」と清水社長。現在もなお、土壌内に潜む害虫を農薬に頼らず、熱湯の力で殺虫する機材を自作するなど、常に新しい挑戦を続けています。

BMプラントで作られる活性水
BMプラントで作られる活性水
手間をかけるからこその「おいしさ」も

清水社長のもとに集まった茨城BMの生産者に共通することは、品質はもちろん、その味も一級品の農産物をつくること。

土浦市でレンコンを栽培する武井さんは、栽培期間中の農薬使用は殺虫剤を1回のみ。土づくりは独自の有機質肥料を施用し、化学肥料は不使用です。
しかし、驚くのはレンコンの糖度の高さ。武井さんのレンコンは平均糖度が9度以上(最高13度)と一般的なレンコンの倍近い数値です。「手間はかかるけれども、自分が吟味した資材で土をつくるから、この味になるんだと思うよ。」と、武井さんは笑顔で語ります。事業を引き継ぐ後継者も育っているそうです。

武井れんこん農園のみなさん
武井れんこん農園のみなさん
また、鉾田市でさつま芋(紅東)を栽培する米川さんも、20年以上農薬不使用で栽培を続けています。
紅東を良質な芋に仕上げるには技術が必要で、栽培が難しいといわれます。近年では作付け量も減少してきている品種ですが、米川さんの紅東は品質もよく、味も絶品。糖度18度以上に仕上がることもあるほどです。米川さんのさつま芋はあいコープだけではなく、関西の生協でも根強いファンがついているほど。最近は、会社勤めをしていた息子さんも農業に従事するようになり、技術の継承が進んでいます。

さつま芋生産者 米川夫妻
さつま芋生産者 米川夫妻
未来につながる農業

清水社長や米川さんのような熟練の生産者たちは、若手生産者の栽培も積極的に支援しています。

ホウレン草や小松菜を出荷している市毛さんは、清水社長の指導のもと独自の資材で土作りを実践。
2017年にはあいコープの声にこたえ、「優ぶらんど」を達成しました。天候が荒れる時季でも、ほぼ一年間、安定して出荷をしてくれています。

小松菜生産者 市毛夫妻
小松菜生産者 市毛夫妻
新規就農2年目となる本田さんは現在23歳。
昨秋には、天候不順で他の茨城産地が出荷に苦戦する中で、「優ぶらんど」のブロッコリーを出荷してくれました。新規品目の作付けにも積極的に取り組み、将来が楽しみな若手の一人です。

ブロッコリー・キャベツ生産者 本田夫妻
ブロッコリー・キャベツ生産者 本田夫妻
同じく、新規就農2年目の多々納さんは、現在「優ぶらんど」達成に向け、試行錯誤の毎日ですが、「茨城BMは生産者同士のネットワークがあるからこそ、がんばれる」と、日々畑と向き合っています。多々納さんの野菜がみなさんの手元に届くのももうすぐかもしれません。

小松菜生産者 多々納さん
小松菜生産者 多々納さん
「近年は、家庭の食事の外部化が進み、どこでだれがどのように栽培したのかわからない農産物を私たちはたくさん食べています。食事で不足する栄養価はサプリメントなどで手軽に補充すれば良いという時代になってしまいました。私たちが心も体も健康に生きていくためには、おいしいもの、バランスの良い食事、そして腸内の微生物が大切。腸内細菌のバランスが整っていれば、ヒトに対する病原菌にも負けないと考えています。こうした考えに基づく農法で育てた野菜を食べることで、病気の方の体調回復に貢献できないか?など、たくさんの可能性を探ってみたいです」と話す清水社長。
まるで、好奇心にあふれた子どものような目で語ってくれました。

関東の食糧基地ともいわれる茨城県でも農業の後継者不足は深刻です。
一極集中の効率的な農業が求められていく中で、命を育む「食べもの」をこれからも食べ続けるために、私たちはどのように「食べ物」を選んでいくべきなのでしょうか?

小松菜
小松菜
BMさつま芋(農薬不使用)
BMさつま芋(農薬不使用)
BMレンコン
BMレンコン

おいしさの秘訣は「土づくり」と「完熟収穫」-産地のおと-



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おいしさの秘訣は「土づくり」と「完熟収穫」
おいしさの秘訣は「土づくり」と「完熟収穫」

産地紹介1:佐々木貞美・慶悦(宮城県遠田郡美里町)宮城県遠田郡美里町で土づくりにこだわった土耕のいちごを栽培する生産者。12月から5月末までいちごを生産、出荷します。あいコープとは30年来の産直関係です。産地紹介2:社会福祉法人みんなの輪わ・は・わ美里(宮城県遠田郡美里町)しょうがいを持つ方々の生活・就労支援施設。『障害のあるなしに関わらず誰もが安心して暮らせる地域社会をめざして』、を理念に利用者の方もいちごの管理をお手伝いしています。規格外のいちごはジャムに加工販売も行います。
一度食べたら忘れられない

「甘さが違う!」「初めて食べた時の感動が忘れられない!」と、組合員からたくさんの好評の声が届くあいコープのいちご。寒い冬の季節から出荷が始まるいちごですが、旬は「春」。これからが最盛期を迎えます。
あいコープのいちごは、「土づくり」を基本とした土耕栽培といちごの生育状況を見極めた「完熟収穫」にこだわっているため、味や香りは別格。一度食べた人は、必ずといっていいほどファンになります。

土で育ったいちご

そんなあいコープのいちごを30年以上作り続けている生産者の佐々木貞美さんは、長年、「土づくり」と「完熟収穫」にこだわってきました。現在では社会福祉法人みんなの輪 わ・は・わ美里事業所で管理するハウスのいちご生産担当職員へ技術指導も行いながら、組合員へおいしいいちごが届けられるよう尽力しています。

佐々木さんご一家。左から、慶悦さん、貞美さん、弘子さん
佐々木さんご一家
近年では水耕栽培(※)も主流となりつつあるいちごですが、貞美さんは「土づくり」を大事にするあいコープの方針に賛同し、あえて土耕栽培に取り組んでいます。米ぬかや有機質肥料を中心に施用し「太陽の光と養分豊かな土で育てる」、この基本を続けることが香りのある、甘いいちごを実らせると語ります。

(※)水耕栽培…肥料を水に溶かした培養液を使用し作物を育てる方法。土耕栽培とは違い、土を一切使用しないのが特徴。宮城県のいちごの作付面積の約4割は土を使わない栽培が主流といいます。

一方、土耕栽培はリスクも伴います。
土中に生息する病原菌によっていちごが病気になり、例えば「萎黄病」などは葉や株全体を枯らせてしまうため、甚大な被害になることも。

萎黄病にかかった苗
萎黄病にかかった苗
一般的には「土壌消毒剤」を使用することで病原菌を一掃できますが、土中の有益な菌もいなくなってしまうことから、貞美さんは不使用で栽培。農薬を使わない代わりに、貞美さんは「太陽の熱」を利用し、土中の病原菌に対処します。収穫が終わったハウスに水を張り、6~8月の気温が高い時期にかけてハウスを締め切ることで、土中の温度を上昇させ土壌病原菌を弱らせます。手間と時間はかかりますが、こうした苦労は惜しみません。

夏場のハウス。地温60℃以上で20日以上が太陽熱処理の目安。天候が重要です。
夏場のハウス。地温60℃以上で20日以上が太陽熱処理の目安。天候が重要です。
そんなあいコープのいちごを守りたいと、現在は、息子の慶悦さん(40歳)も父と一緒に畑で汗を流しています。
平成元年に建てたというハウスを見つめながら、「いちごは1年に1作なので、やり直しがきかない。丈夫で健康な苗づくりに始まり、寒くなる時期に向かって株を育てて、実を成らせる。ここ数年は大雨や曇天、極度な低温など、長年の経験でも予測できないことも多くなった。いちごを待っていてくれる組合員のためにも、毎日気が抜けない。」と貞美さん。

ハウスではいちごが元気に育っています
ハウスではいちごが元気に育っています
熟度を見極める

完熟出荷を支えているのは収穫時期の「見極め」。
春先、陽射しが暖かくなるほど、色づき、甘みののりが進みやすくなりますが、少しでも採り遅れると過熟に。色みや粒の張り具合の見極めが大切です。

「春のいちごはデリケート。輸送に強くするには早もぎすれば安心ですが、甘みがのりきらない。おいしくないいちごは届けたくないので、ぎりぎりまで畑で成らせます。収穫翌日に配達できるあいコープだから、完熟出荷ができるんです。」と慶悦さん。
次世代へのバトンは、着々と引き継がれているようです。

このいちご作りの技を広げようと7年前からわ・は・わ美里事業所でもいちご栽培を開始。
生産を担当する池添航さん(37歳)は、貞美さんを始め、地域の先輩方にも助言をもらいながら、技術をイチから学んでいます。

収穫週の池添さん
収穫週の池添さん
「外気温が5℃以下の寒い冬でも、真っ赤に色づき、甘い実を成らせるいちごはすごい。毎日、葉に虫がついていないか、次の花の蕾がついているか、一株一株愛おしく感じます。日々の変化を見逃したくないから、いちごのハウスで暮らしたいくらいです。」と池添さん。

収穫したばかりのいちご
収穫したばかりのいちご
一昨年、昨年と厳しい寒さや春先の害虫発生で思うようないちごが採れない時期もありましたが、今季は天候にも助けられ、味も収量も順調だそう。失敗や苦労を乗り越え、いちご作りにかける熱意と自信が伝わってきました。

佐々木さんのいちごには、メッセージが添えられています。
佐々木さんのいちごには、メッセージが添えられています
いちご(土壌消毒剤不使用)
いちご(土壌消毒剤不使用)

若手に引き継ぐ、地域と食の未来-産地のおと-



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若手に引き継ぐ、地域と食の未来
若手に引き継ぐ、地域と食の未来

大郷みどり会(宮城県大郷町)宮城県黒川郡大郷町で、水稲、畑作、平飼い卵などの資源循環型農業に取り組む産直産地。あいコープの産直産地の草分け的存在。畜産堆肥を基本とした土作りで、有機栽培や農薬不使用栽培など、レベルの高い栽培に挑戦しています。年間を通じて、田植えや田んぼの生き物調査などの組合員交流も活発に行われています。
のどかな田園地帯が広がる宮城県黒川郡大郷町で、環境保全型・資源循環型農業に取り組む大郷みどり会(以下、みどり会)。
近年、その大郷町でも耕作放棄地の増加、農家の高齢化など、地域一帯で深刻な問題を抱えています。水田地帯であるが故、米消費量の低迷、米価下落、減反制度の廃止など、厳しい米穀情勢が直に影響しているといいます。

そのような逆風の中、みどり会では30~40代の若手4名が中心となり、地域の田んぼを守るために約65ヘクタールの水田で有機栽培や特別栽培といったレベルの高い米作りに取組んでいます。

現在、栽培する水田作付面積の6割を若手が管理。稲刈り後の12月頃から、翌年の土づくりに向け土壌分析を行い、地形や土質などに適した肥料設計を行うところから始まります。みどり会のベテラン生産者から助言をもらいながら、米作りの計画から田んぼの管理まで一貫して若手が行います。

大郷みどり会の若手4人(左から、只野正志さん、西塚忠樹さん、松野剛明さん、清水浩規さん)
大郷みどり会の若手4人
「栽培計画を立てる時には、土壌分析の結果も大事ですが、田んぼの特性や地域特有の環境条件も考えることが大切です。例えば、田植え時期の水の引きやすさや、周りの農家の人柄もわかった上で作業を組み立てていきます。逆に、私たちが自分勝手なことばかりやっていては、地域で農業はできません。目に見えないことですが、ここでの米作りを通じて、地域とのコミュニケーションがものすごく重要だと気付かされました。苦労もありますが、日々のなにげない会話があることで、自分たちの手が回らない時に地域で米作りの先輩が手を貸してくれることもあります」
そう語るのは、若手の西塚忠樹さん(33歳)。みどり会で、有機栽培圃場の管理責任者です。
「毎年、計画を立てる段階からワクワクしています。自分たちの力で米を栽培するその過程が楽しい。計画通りに栽培できた時は、本当にうれしさでいっぱいですが、今年のようにうまくいかない年もあるのが農業。この悔しさをバネに、来年はもっとこうしたい、と今からいろいろと考えています」と、意欲的です。

そんな姿に、みどり会の郷右近代表は「今、みどり会では若手が中心になって、有機栽培や優ぶらんど基準に挑戦している。これからは、地域のリーダーとして地域を巻き込んでいくこと、そして、組合員を巻き込んで、産直運動をけん引してほしい」と若手に期待を膨らませています。

みどり会代表 郷右近秀俊さん
みどり会代表
「地域の中で認められる農家になって、この地の米作りを守りたい。有機農業を軸に、地域の田んぼの半分以上を請け負えるだけの実力をつけることが当面の目標です」と西塚忠樹さん。
先代が守ってきた地域の米作り、そのバトンは確実に次の世代へ受け継がれています。

玄米・みどり会のひとめぼれ(有機栽培)
玄米・みどり会のひとめぼれ(有機栽培)
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