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放牧酪農で「地域の資源循環」と「良質な生乳」の生産を実現-産地のおと-


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放牧酪農で「地域の資源循環」と「良質な生乳」の生産を実現

放牧酪農で「地域の資源循環」と「良質な生乳」の生産を実現

産地紹介:株式会社飯豊ながめやま牧場(山形県西置賜郡飯豊町)山形県の飯豊連峰のふもとにあり放牧酪農に取組む牧場。敷地面積は180ha、広大な牧草地で母牛から子牛までおよそ300頭を飼育。2006年より放牧酪農に取組み、2010年に「放牧畜産実践農場」の認証を取得しました。その牛乳は「放牧酪農牛乳生産基準」を取得した(株)奥羽乳業でパスチャライズ製法により殺菌され、あいコープへ放牧パスちゃん牛乳として出荷されています。2013年より取扱いが始まり、現在では年間36万5千本利用されています。

放牧パスちゃん、牛乳のこだわり

あいコープの「放牧パスちゃん牛乳」は牛乳本来のコクや風味を味わうことのできるパスチャライズ牛乳(注1)です。一般の牛乳の多くが超高温殺菌牛乳(120℃~130℃ 2秒間殺菌)に対し、本品は75℃ 15秒で殺菌する高温殺菌(パスチャライズ製法)を採用。このパスチャライズ牛乳は生乳の特質を活かした製法であり「良質な生乳」が必ず必要です。

注:パスチャライズ牛乳…風味を損なわない温度で生乳を殺菌した牛乳

ながめやま牧場設立にあたっては「酪農とは、大地の土が育んだ草を牛が食べ、草を食べた牛はそこで糞をして土を肥やす。その自然循環の中の1コマである」という考えを基本とし、牛が広大な放牧地でのびのびと動き回り、健康的に育つことができる環境づくりに尽力しました。2010年にその取組みが認められ、ながめやま牧場は「放牧畜産基準(注2)」を満たした牧場として認証されました。酪農経営で認証を受けた牧場は本州ではわずか4カ所のみとなっています。ながめやま牧場の放牧酪農は「良質な生乳」の生産と「資源循環」が実現できる理想の環境が整っています。

注2:(一社)日本草地畜産種子協会の定める放牧畜産における放牧地面積や放牧時間など飼養管理について定めた基準。

広大な放牧場
広大な放牧場

牛舎から牧場へ移動する牛たち
牛舎から牧場へ移動する牛たち

良い牛乳は健康な牛から

ながめやま牧場の生乳を「放牧パスちゃん牛乳」に製品化している奥羽乳業では、原乳を受け入れる際「体細胞数」と「生菌数」などの検査を行います。一定の基準をクリアしたものでなければ受け入れはできません。原乳の品質は牛の健康状態が大きく影響します。超高温殺菌よりも殺菌温度が低いパスチャライズ製法は、生乳の品質が悪いと製品化後の品質も悪くなってしまうため、一般の牛乳よりもより一層気をつかわなくてはなりません。

実は牛はとてもデリケートな動物で、ストレスにとても敏感です。日々の健康管理、牛舎や搾乳施設の衛生管理の徹底はもちろん、開放的な牛舎や放牧地で自由な行動ができることが牛のストレスを減らし、健康と原乳の品質につながるといいます。

資源循環型酪農

毎日300頭の牛から出る糞の量は約13トンで、それらはすべて有効活用されます。牛舎から運び出した糞は自前の堆肥舎で空気ともみ殻と混合し、2~3週間かけて発酵させていきます。最終的にはさらさらとした臭いの少ない完熟堆肥となります。出来上がった堆肥は敷地内にあるデントコーン(注3)畑の土づくりにも活用されます。12haを超える広大な畑にとってはなくてはならない大切な資源です。またバーク(樹の皮)と混合し、牛舎の敷料としても活用するコンポストバーン(注4)にも取り組んでいます。敷料が堆肥化する際に、放線菌が増えることで牛にとっても有害な大腸菌などの繁殖を抑える効果も期待できるそうです。

コンポストバーン(注4)牛舎を攪拌する様子
コンポストバーン牛舎を攪拌する様子

高橋副場長「牛たちのために良い退避を作るのも大切なのです」
高橋副場長

注3:デントコーン…飼料用のトウモロコシ
注4:デントコーン…コンポストバーン…牛舎の休息エリアに堆肥を積み上げ、朝夕2回、ロータリーで攪拌し、牛舎内で糞や尿を堆肥化させます。クッション性にも優れ、牛が心地よく過ごすことができます。

ふかふかでリラックスするモ~
ふかふかでリラックスするモ~

エコフィードの取組み

ながめやま牧場では地域の食品副産物の活用にも積極的に取り組んでいます。近隣の生産工場から出るおからやフルーツかす、ウイスキーの搾りかすなどを牛のエサに混合します。本来は産業廃棄物になってしまうものも「資源」として、活用するこのエコフィードの取り組みは、飼料の国内自給率向上に大きく貢献しています。輸入飼料に頼る畜産現場の中で、ながめやま牧場の牛たちが食べる飼料は、自給の牧草や自家生産のデントコーン、エコフィードにより約3分の2が国内産で賄うことができています。

ウイスキー粕(左)、おから(右)
ウイスキー粕(左)、おから(右)

ブレンドしたエサ
ブレンドしたエサ

若き牧場の担い手

31歳の若さで牧場の副場長を任されている松岡さん。前職は酪農とは無縁でしたが、縁あってながめやま牧場で働きはじめたそう。「牛たちのこと、牧場のこと、畑のこと。任されている分やりがいもあり、楽しみながら続けられていると思います。牛も自分もストレスフリーな牧場です。」と笑顔で答える松岡さん。しかし松岡さんが牧場で働き始めた5年前に比べ、地域の酪農家は確実に減っているそう。家族経営の酪農家は、息子の代になり廃業してしまう場合も見られます。それでも松岡さんはながめやま牧場での放牧酪農に携わっていきたいと言います。「牧草管理に力を入れて、放牧地をより快適にしたいです。今は元の地力に頼っている部分もあって、今以上に土づくりに取り組んで、よい牧草を牛たちに用意してあげたい。ながめやまでの放牧酪農をこれからも続けられるよう励みます。」。

松岡副場長
松岡副場長

日本の酪農は今春乳価が上昇しましたが、依然として作り手の減少、海外に飼料を依存する厳しい現状があります。そんな中、ながめやま牧場は放牧酪農で牛の本来あるべき姿を実現し、社会情勢に左右されない取組みを実践しています。日々の利用を通じて、地域も牛も元気になる、明るい酪農の未来を共に築いていきましょう。

放牧パスちゃん牛乳
放牧パスちゃん牛乳